公開日:2026年3月30日

「チュルリョーニス展 内なる星図」が上野・国立西洋美術館で開幕。絵画と音楽が交わり、精神世界の旅へ誘う、リトアニアの国民的芸術家の世界

日本では34年ぶりの回顧展。会期は3月28日〜6月14日

会場風景

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わずか6年ほどの画業で残した作品群。約80点を展示

リトアニアを代表する芸術家、ミカロユス・コンスタンティナス・チュルリョーニス(1875〜1911)の回顧展「チュルリョーニス展 内なる星図」が、東京・上野の国立西洋美術館で開幕した。会期は6月14日まで。

1875年にリトアニア南部の町に生まれたチュルリョーニスは、絵画と音楽というふたつの領域で類まれな才能を発揮し、1911年に35歳の若さで亡くなるまでのわずか6年ほどの画業で300点以上の作品を手がけた。世紀末のアール・ヌーヴォーや象徴主義、ジャポニスムといった当時の潮流と共鳴しつつも、作曲家としての感性とロシア帝国の支配下にあったリトアニア固有のアイデンティティに根差した作品群は、独自の世界を形成。さらに神智学や天文学などの思想潮流にも関心を示し、人間の精神世界や宇宙の神秘を巡る思索に満ちた絵画を制作した。2000年以降、パリのオルセー美術館をはじめ、ヨーロッパ各地で展覧会が開催されるなど再評価の機運が高まっている。

会場入り口

日本では34年ぶりの大回顧展となる本展は、祖国リトアニアにおけるチュルリョーニス生誕150周年(2025年)の祝賀ムードを引き継いで開催される。現存する作品の大部分を所蔵する国立M.K.チュルリョーニス美術館(カウナス、リトアニア)の全面協力のもと、厳選された約80点の絵画やグラフィック作品が来日した。謎に包まれた代表作《レックス(王)》をはじめ、日本初公開の作品が複数含まれる。担当学芸員は朝倉南(国立西洋美術館研究員)。

朝倉南(国立西洋美術館研究員)

展示はテーマごとに区切った全3章とプロローグ、エピローグから構成されており、短くも濃密な画業の軌跡をたどることができる。プロローグではまず、画業の出発点を紹介する。

オルガン奏者の父を持ち、幼い頃から音楽の才能を示したチュルリョーニスは、18歳のときに作曲を学ぶためポーランドのワルシャワ音楽院に入学。さらにドイツのライプツィヒの音楽院で学んだのち、1902年頃から絵画の道を本格的に志すようになる。絵画制作に集中的に取り組んだのは1903年頃〜1909年の6年ほどのことだ。

ミカロユス・コンスタンティナス・チュルリョーニス 森の囁き 1904

作家は、1904年の春に新たに開校したワルシャワ美術学校に入学した。初期作品の大部分は失われており、ここで展示されている《森の囁き》(1904)は数少ない現存する作品のひとつ。暗い森の中で立ち並ぶ木々の上に、かすんだ人の手が浮かび上がる。木立と竪琴の弦、森のざわめきと竪琴の音色を重ね合わせたこの作品には、絵画と音楽、視覚的なものと聴覚的なものの融合というテーマがすでに見てとれる。

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